AIによる株式投資中級【バリュエーション】

時間の要素を考慮すると,「現在の100万円」と「1年後の100万円」が同じ値打を持つはずがないこと,また,リスクの要素を考慮すると,「確実な1年後の100万円」と「不確実な1年後の100万円」が同じ値打ちを持つはずがないことを説明します。

つまり,投資の2大要素とも言うべき時間とリスクについて,それらがキャッシュフローの評価(バリュエーション)にどのような影響を及ぼすかが論点です。

ところで,世間一般で「高リスク・高リターン」という概念を間違った意味で理解している人の方が多いように見受けられます。

これは,高いリスクを負担すれば「必ず」高い収益率で報われるという意味ではありません。その正しい意味を以下で説明することにします。

リスクと期待収益率

定義的に,「投資」(investment)とは,現在の確実な価値を犠牲にして,将来の不確実な価値を得ようとする行為です。

この文の前段部分はアウトフロー(支出),後段部分はインフロー(収入)を説明しています。

しかし,異なった切り口から眺めると,現在・将来の対比は「時間」(time)に値する記述,確実・不確実の対比は「リスク」(risk)に関する記述として理解することができます。

投資をすべきか否か,あるいは,2つ以上の投資機会のうちどれが有利かを判断する場合,必ず念頭におかなければならない要素が時間とリスクなのです。

投資にリスクが伴うとは,投資によって将来に起こり得る状態がひとつではなく,実際にどの状態が起こるのかが将来になってみないとわからないことを意味しています。

したがって,将来の状態ごとにキャッシュフローは異なる値を取ることになります。

しかし,いちいち「状態aは確率b%でy円のキャッシュフローをもたらし,状態bは…」と表現していては面倒で仕方がありません。

そこで,これらをひとつの数値に要約したものが「期待キャッシュフロー」(expected cash flow)です。

たとえば,ごく単純に現在における投資の結果が1年後のキャッシュフローを生み出すものとして、状態aが実現すれば120万円という高収益,状態bが実現すれば86万円という低収益だとし
しょう。

ただし,現在において,状態aが発生する確率は40%,状態bが発生する確率は何%と見積もられています。

そこで,それぞれの状態が発生する確率でウェイト(加重)すると,期待キャッシュフローは100万円になります。

これは濃度が異なる2種類の食塩水を混ぜたとき,%濃度の食塩水ができあがるのかを問う計算問題に似ています。

計算上得られた100万円という額は,実際に取り得る値である120万円や86万円のどちらとも異なりますが,簡潔明瞭なフイクションとして非常に便利です。

なお,世間一般で誤解の多いところですが,将来において悪い状態が実現する現象をリスクと呼ぶのではありません。

あくまでも,良い状態が起こるか,悪い状態が起こるのか。現在の時点でわからないことがリスクなのです。

直感に反するかもしれませんが,将来に悪い状態が実現する確率が100%ならば,確実にそうなることが現在の時点でわかっているのですから,まったくリスクはない理屈になります。

リスクという語の響きが多くの人に悪いものだけを連想させるのかもしれません。

むしろ,日本語で言えば「危険」よりも,「危機」(危険と機会の両方を含む)のほうに近い概念だと考えてください。

つまり,良い状態が起こる可能性も含めてリスクなのです。

実際のところ,ある状態が実現する確率を見積もることが難しく,ましてや状態の数は無限にあるのが現実ですから,正確に計算できない期待キャッシュフローという概念に果たして意味があるのだろうかと疑念を持つかもしれません。

しかし,ファイナンス理論は生身の人間であるユーザーに対して,神様のようなレベルで何かを計算できることを求めているのではありません。

むしろ,計算できると仮定した場合にどのような現象が起こるのかを,概念として理解することが大事です。