AIによる株式投資中級【ベータ係数】

ところで,H.マーコピッツのモデルは画期的ではありましたが. 1950年代当時のコンピュータは性能が低かったために,残念ながら証券投資の実務に利用するうえで深刻な難点を抱えていました。

一般に,相関係数を計算する際の組み合わせの数はn(n-l)/2個となります。

たとえば,3銘柄のポートフォリオならば,組み合わせの数は3個で済みますが,5銘柄ならば10個, 100銘柄ならば4,950個といった具合に飛躍的に増加します。

当時は大量のカードに人間の手でパンチ(穴)を空け,かなりの時間をかけて大型コンピュータに読み込ませていましたが,たった100銘柄の計算でも約33分かかったそうです。

パンチの作業にエラーがあれば。原因を見つける作業からやり直しです。

ところが,相関係数の計算が膨大になるという実用的な難点は. 1963年. W.F.シャープ(William Sharper 1934―)の「ベーダ理論」(beta theory)によって解消されました。

定義的に,ある株式のベータ係数」(β)とは,市場平均の収益率が1%変化するとき,その株式の収益率が何%変化するかを表した感応度です。

たとえば,東京電力株のベータ係数が0.8だとすれば,日経平均株価が1%上昇(下落)する日は0.8 %上昇(下落)する傾向があります。

これに対して,パナソニック株のベータ係数が1.4だとすれぱ,日経平均株価が1%上昇(下落)する日に1.4%上昇(下落)する傾向があります。

したがって,ベータ係数が高いパナソニック株のほうが振幅の大きい銘柄であり,東京電力株よりもリスクが高い投資対象であると言えます。

ベータ係数βの概念は相関係数corrと似ているのですが,決定的に異なるのは個々の株式です。

関係を測るのではなく,市場平均との関係で個々の株式の変動パターンを表現している点です。

いわばチームの状況を見る際,選手間の相性を総当たりで見るのではなく。中心に据えたチームそれ自体との相性を見ていることになります。

この性質によって,必要とされる計算回数を劇的に減らすことができます。

たとえば100銘柄のポートフォリオならば100組の計算だけで済みます。

そのため,徐々に証券投資の実務にポートフォリオ理論の成果が利用されるようになりました。