AIによる株式投資中級【ポートフォリオ理論(MPT)】

本サイトで取り扱う内容は。投資家が複数の株式に分散して投資することによって,そうでない場合よりも全体のリスクを低下させることができるという「リスク分散効果」です。

ポートフォリオ理論は科目名でいえば証券投資論の領域と言えますが,最後に解説するCAPM (資本資産価格モデル)がコーポレートファイナンス(企業財務論)に深く関与してくる関係上,本サイトでも取り扱っています。

リスクプレミアムの概念について説明しましたが,それが具体的にどのような値に決まるのかについては触れず,あえてブラック・ボックスに封印しておきました。

ここでは鍵を差し込んでボックスを開けます。

リスクに応じて期待収益率が高くなる原理を説明しましたが,簡単化のために,起こり得る状態の数は2つにとどめました。

より一般的に状態の数を無限と考えて,収哇率が「正規分布」(normal distribution)にしたがうとみなすことにします。

平均を中心として,左右対称の釣り鍠型の確率分布になります。

このとき「期待収益率」{expected rate of return)は確率的に期待できる平均的な収益率を,「標準偏差」(standard deviation)すなわち収益率のバラツキ程度を表現しています。標準偏差が大きくなるほど,期待収益率から離れた収益率(大アタリや大ハズレ)が実

ところで,手持ちの資金をひとつの投資先に集中させず,複数の資産に分けて投資することを分散投資」(diversification)と呼び,保有している資産の全体を「ポートフォリオ」(portfolio)と呼びます。

もともと書類挟みのことですが,A社株,B社株…といった具合にきちんと整理していくことから,いつしか書類挟みに入っている資産そのものをポートフォリオと呼ぶことになったのでしょう。

火事になれば,この書類挟みを抱えて逃げ出せばよいのです。

欧米において,どうやら1920年代にはすでに分散投資が行われていたようです。

従来からの経験則として「ひとつの龍にすべての卵を入れるな」と言われてきました。

ひとつの籠に入れてしまうと,同時にすべての卵が割れてしまうリスクがあるからです。

私たちの実感にも合う格言ですが,当時は理論的な根拠がなく,どうやら感覚的な判断で投資先が分散されていたというのが実情のようです。

そのため,有名な経済学者にして優秀な投資家でもあったJ. M.ケインズ(John Maynard Keynes)などは,世間で行われている分散投資を邪道と決めつけていたぐらいです。

毎朝,彼は起きた直後にベッドの中でその日の新聞を熟読し,最も望ましいと判断した株式銘柄に「集中投資」していました。

J. M.ケインズにとって,他の人たちが行っている分散投資は,単に「下手な鉄砲でも数多く撃てば当たる」やり方にしか見えなかったのでしょう。

ところが, 1952年,H.マーコビッツ(Harry Markowitzによって構築された「現代ポートフォリオ理論」(MPT: modern portfolio theory)は,期待収益率を低下させることなく,分散投資によってリスクを低められることを論証してみせました。

これをポートフォリオの「リスク分散効果」(risk diversification)と呼びます。

従来の単なる経験則に科学的な根拠を与え,数多くの投資家が行っている投資行動が合理的であることを立証したのですから画期的な貢献です。

この研究業績には, 1990年度のノーベル経済学賞が授与されました。

なお,慣例にしたがって本サイトでもrisk diversificationを「リスク分散効果」と訳していますが,意味するところはリスクの低下です。

日本語の場合,統計的なリスク尺度である「分散」(variance)も偶然に同じ言葉なので混乱が生じやすく。気をつける必要があります。

英語で考えれば,まったく異なる概念であることは明らかです。