AIによる株式投資中級【分散投資によるリスク低下】

H.マーコビッツの研究業績が発表される以前,ポートフォリオというのは,投資割合に応じて個別銘柄の性質を反映するだけのものと認識されていました。

実際,「ポートフォリオの期待収益率」については,単なる加重平均にしかなりません。

たとえば,A社株:B社株を30 : 70 の割合で組み合わせれば,それぞれの期待収益率を30 : 70 の割合で取り込んだ数値にしかなりませんので,この性質それ自体が特段のメリットを持つことはありません。

便宜上,A社株とB社株を組み合わせた資産の全体をポートフォリオA&Bと表現することにしましょう。

横軸をB社株の割合,縦軸を期待収益率E[r]とした図において,右上がりの直線が投資割合を変化させたときの軌跡です。

30:70の割合というのは,横軸が0.7の位置になります。

具体的な数値例において,A社株の期待収益率は10%, B社株の期待収益率は20%ですが,ポートフォリオA&Bの期待収益率は17%になります。

しかし,「ポートフォリオのリスク」については,驚くべきことに,個別銘柄のリスクを加重平均した水準よりも低下するのが通常です。

投資対象のリスクは,収益率のバラツキ程度を意味する標準偏差衣こよって測られます。

数値例において,A社株の標準偏差は5%, B社株の標準偏差は10%ですが,ごく単純に考えると,ポートフォリオA&Bの標準偏差は,30 : 70 のウェイト(加重)で平均して12%になりそうなものです。

ところが,横軸をB社株の割合,縦軸を標準偏差cyとした図において,投資割合を変化させたときの軌跡は一般に直線とはならず,むしろ下方向に垂れ下がった曲線となるのが通常です。

縦軸はリスクの尺度ですから,分散投資によって一般にリスクが低下することになります。

要するに,分散投資をすることによって,高いほうが望ましい期待収益率は加重平均にしかならないけれども,低いほうが望ましいリスクは加重平均以下にできるということで,これこそが画期的な発見なのです。

となると,どのような場合にリスクが加重平均よりも低くなり(曲線),どのような場合に加重平均(直線囗こしかならないのかが次に検討すべき事項となります。

結論を先に述べると,A社株とB社株の収益率が「完全プラス相関」でないかぎり,リスクは標準偏差の加重平均よりも低下します。

分散投資によるリスク低下

ポートフォリオのリスク分散効果は,組み入れる銘柄どうしの相性によって強さが異なります。

たとえば,雨傘販売のA社株と,リゾート経営のB社株に分散投資するとしましょう。

悪天候が続けぱA社株の収益率は高くなりますが,B社株の収益率は低くなります。

好天候が続けば逆の関係になります。

つまり,これらは正反対の変動パターンを持つ関係にあり,両者を組み合わせると互いの動きを相殺しあうため,ポートフォリオの収益率はブレが少なく安定的になります。

ところがリゾート経営のB社株と。ドリンク販売のC社株を組み合わせても,天候に対する反応は同じですから,ポートフォリオのリスクは低下しません。

わかりやすさを追求して極端な事例を挙げましたが,雨傘販売のA社株とリゾート経営のB社隊は「完全マイナス相関」の関係にあり、リゾート経営のB社株とドリンク販売のC社株は「完全・プラス相関」の関係にあります。

相関係数

より厳密に,2つ以上の銘柄の収益率が,どのぐらい同じような動き方をするかを測るには,「相関係数」(correlation coefficient)が使われます。

たとえば,A社株とB社株の相関を見るとき。記陟はcorrABとしておきましょう。相関係数COrrA8は+1から-1までの数値を取りますが,「プラス相関」ならば同じ方向に動<傾向がある一方(corrAB > 0),「マイナス相関」ならば反対方向に動
く傾向があります(corrAD < 0)。

また,「無相関」ならば収益率は無関係に動いていることになります(corrA3=O)。

横軸をリスク(標準偏差),縦軸を期待収益率とする図において,A社株とB社株を組み合わせたものがートフォリオA&Bを表現することにしましょう。

B社株の割合という軸は廃止されています。

点BはB社株そのもりを表していますから,線上の任意の点のうち,点Bに近い位置にあるものほど,B社株への投資の割合が高いことになります。

リンゴとミカンを混ぜてフルーツ・ジュースを作るとき,後者を多くすればするほど,ミカンの味に近いものが出来上がりますが,それと同じ現象だと考えればわかりやすいでしょう。

この図には相関係数の値に応じた3種類の線が同居して描かれています。

まず,「完全プラス相関 (corrAB = 1)の場合,組み合わせの軌跡は右上がりの直線となります。

これは収益率が完全に同じ動き方をする状況であり,リゾート経営とドリンク販売の事例がそうであるように,分散投資してもリスクは加重平均にしかなりません。

次に,「完全マイナス相関」(coiTab = – 1)の場合,組み合わせの軌跡は縦軸でターンする折れ線となります。

これは収益率が完全に反対の動き方をする状況であり,雨傘販売とドリンク販売の事例がそうであるように,最も強くリスク分散効果が発揮されます。

ある投資割合のもとではリスクをゼロにできる理屈です。最後に,それらの中間の値に取る場合( – 1 < corrAB< 1), A社株とB社株を組み合わせたポートフォリオA&Bは,左方向に張り出した弓形の曲線となります。

しかし,相関係数が最大値もしくは最小値となるのは極端なケースであり、おおよそ現実的ではありません。

したがって,これ以降の分析では。弓形の曲線に考察の対象を絞ることになります。

H.マーコピッツが明らかにしたのは,相関係数が+1という極端なケースでもないかぎり,必ず分散投資によってリスクは加重平均よりも低下するという事実です。

男女の仲ならば,同じような性格のほうが無難かもしれませんが,少なくともポートフォリオについては,異なる変動パターンどうしのほうが組み合わせとして望ましい効果が得られるのです。