AIによる株式投資中級【株式の個別リスクと市場リスク】

ここまでで明らかなように。数多くの資産に分散投資をする場合,そうでない場合と比較して,より低いリスクで同じ期待収益率が可能となります。

この考え方に基づくと,すべての銘柄を組み入れたポートフォリオによって,最大限のリスク分散効果が得られることになります。

とはいえ,完全にリスクがゼロになるとは考えられません。

定義的に,分散投資によって消すことができる要因は「個別リスク」(unique risk)と呼ばれる一方,消すことができない要因は「市場リスク」(market risk)と呼ばれ,個々の株式の「総リスク」(total risk)はこれらの2種類に要素分解されます。

たしかに,組み入れる銘柄数を増やすと,変動パターンを相殺しあう組み合わせは増えていきますので,株式を発行している企業に固有の要因は消えていきます(個別リスク)。

たとえば,新製品の不人気による業績悪化,不祥事の発覚,社長の急死などが企業に固有のリスク要因だと言えます。

ある企業がこの種の要因によって業績悪化に見舞われるとしても,賢明な投資家は分散投資をしますので,他の企業の業績良好が損失を相殺する役割を果たしてくれます。

ほとんどの企業が同時に不人気の商品を発売することはないという現実を考えれば,納得の行く現象でしょう。

しかし,組み入れる銘柄数を増やすにつれて,徐々にポートフォリオの内容は株式市場の全体と似てくるので,投資の成果は市場平均のパフォーマンスに近づいていきます。

つまり,日経平均株価や東証株価指数など。市場の全体を表す指標と同じような動き方で投資家のポートフォリオも収益率が上下します。

たとえば,原油価格,金融政策,為替相場。経済成長率,利子率の変化など,おおよそ経済の全体に共通する要因は,分散投資しても残ってしまいます(市場リスク)。

ある企業が急激な原油高によって業績を悪化させるならば,他の大多数の企業も同じ状況に直面していることが多く,経済の全体として原油高というショックに見舞われることになるのです。

ひとつの龍にすべての卵を入れたりせず,複数の籠に分けて入れるのが賢明ですが,飛んで来る石ころがひとつの龍を直撃しても,他の龍は無傷で済みます(個別リスク)。

しかし,すべての龍を同時に揺らすような衝撃には対処しきれません(市場リスク)。

別の比喩で言えば,盗難は個別リスクである一方。地震は市場リスクです。

なぜなら,前者は特定の家を狙い撃ちした現象であるために,他の家が盗難に遭う現象と相関していないのに対して,後者は同時多発的な現象であるがゆえに,家々の間で相関しているからです。